鬼才ブランドン・クローネンバーグ監督の長編第3作目。カナダ・クロアチア・ハンガリー合作のホラーを「X エックス」「pearl」のミア・ゴスと「PASSING」のアレクサンダー・スカルスガルドが共演。

日本公開|2024年4月5日

キャスト|アレクサンダー・スカルスガルド、ミア・ゴス

監督|ブランドン・クローネンバーグ

※この記事には映画のネタバレを含んでいます。未鑑賞の方はご注意ください。

1|おおまかなあらすじ

 とある国の孤島のリゾート地を訪れたスランプ中の作家ジェームズ(アレクサンダー・スカルスガルド)と妻のエムはバカンスに訪れ、新しい作品のインスピレーションを得ようとしていた。ある日、小説のファンだという女性ガビ(ミア・ゴス)に話しかけられて、ガビの夫とともに夕飯に出掛け意気投合する。次の日彼らは観光客が行かないように警告されていた敷地外へとドライブへ出掛け、そこでジェームズたちは事件へと巻き込まれる・・・

2|敷地外へ

 ジェームズは妻のエムが提案した街の中華屋でのディナーに反対します。この街での外食はもうたくさんだと。しかし彼のファンだと言う女性ガビに話しかけられて一緒に中華屋での夕食に誘われます。本があまり売れず、新しい作品のアイディアを思い浮かばない彼にとって、若い女性からファンだと言われたのは舞い上がったことでしょう。妻とカビとカビの夫の4人で夕食に訪れます。

 次の日、4人はリゾート地からの外出を禁止されているのにも関わらず車を借りて出掛けます。ジェームズは森の中で排尿して戻ろうとしている時、背後からガビにナニを持たれて射精してしまいます。何事も無かったように現場に戻りあたりはすっかり暗くなっています。お酒を飲みすぎ4人はそのまま車に乗り込みジェームズの運転でホテルへ戻ろうとしますが、途中で人を跳ねてしまいます。文明国じゃないから残虐で不潔よ。警察には通報しない。とガビは言って4人は見殺しにしてホテルへ戻ります。

3|罪人の許される方法は?

 朝になってジェームズは警察官に連行されます。その男は妻は罪を認めたと言います。そして、この国では人を殺めた者は被害者家族の長男により処刑されると恐ろしい事を口にします。しかし外国観光客向けの身代わりのクローンを多額の費用と引き換えに国が処刑台に立たせるクローンを作るとも言います。ジェームズは理解が追いつかないままこのクローン法に同意をします。

 やがてクローンが完成しジェームズのクローンは処刑台に括り付けられます。被害者の長男らしき男の子(10歳前後に見えます)にナイフで腹を滅多刺しにされるのをジェームズとエムは座って見たのですが、ジェームズは殺されたクローンを見て何故かニヤリとします。

 ホテルへ戻りジェームズはパスポートを探しますが紛失してしまいます。フロントで延泊の手続きを行なっているとガビが現れことの経緯を説明されました。カビの夫であるアルバンはこの国で建設中であったインフィニティプールを設計した人物であり、作業中に作業員2名が死亡したことにより死刑に処されたと告白します。もちろんアルバンもクローン法により処刑されたのでしょう。この体験によってガビとアルバンはこの国に魅了されたようです。そしてあなたもでしょ?とジェームズを別荘に誘います。別荘には同じ体験を分かち合った仲間がいました。

 パスポートをなくしたジェームズに入国管理事務所に頼んでやる代わりにゲームをしようと持ちかけます。島に貢献し勲章を得た人間の自宅に忍び込みメダルを強奪するというゲームです。彼らは邸宅に忍び込み家主たちを縛りあげ銃を向けます。隠れていた家主の仲間により銃乱闘になりジェームズたちは再び逮捕されます。

4|警察官との癒着

 変わってしまったジェームズを残し、エムは1人で出国します。ジェームズたちはクスリと性欲に溺れます。ガビは警備員にもらった麻薬を吸いながら言います”近代国家は麻薬は御法度だけど、これは宗教的なものよ”ハイになりなが仲間たちとセックスを繰り広げます。

 そしてジェームズのパスポートの発行を阻止している警察官を仲間たちが拉致してきます。ジェームズは警察官を痛めつけ雄叫びをあげます。頃合いを見てガビは警察官の顔を覆っていた袋を脱がすと、なんとクローンのジェームズだったのです。ジェームズは恐ろしくなって部屋に戻り外を見ると仲間が楽しそうに笑っています。そこへガビが部屋を訪れ、ただの冗談よと言います。警察官に頼んでクローンを作ってもらったと言います。ジェームズがガビたちが恐くなりバスに乗って逃げようとします。しかしガビたちは車で追いかけて来て発砲します。

5|ガビに嵌められたのか?

 ガビは告白します。あんたのファンでも、本も読んだ事ない。罠に嵌めようと思ってたけど自ら人を跳ねたと笑います。バカンスの暇つぶしにジェームズに声をかけていたのです。

 ジェームズは逃亡しますが発砲され足を負傷します。歩いていると現地民の家を見つけます。気を失い気がつくとベッドの上にいました。家から出るとガビたちが犬を連れて立っています。ガビは犬を殺せと言います。犬と言っても首輪をつけたクローンのジェームズなのです。ジェームズはクローンを殴り殺します。ガビに抱きしめられ何故かジェームズはガビの乳房を吸います。

 そして帰国の時、バケーションの時期が終わりそれぞれ帰路に着きます。この国は雨季の季節になるようです。空港には飛行機の最終アナウンスが流れます。ジェームズはパスポートを持って座っています。そして雨が降っているホテルに場面は変わります。1人でホテルのビーチチェアに座るジェームズが映り終了です。

6|感想と考察

6-①最後に残ったジェームズはクローンなのか?

 クローンを作りクローンを殺し、平然と帰国する観光客。自分が何者なのか本当は自分自身がクローンなのではないか分からなくなり心も壊れてしまったようにみえました。実際はジェームズがオリジナルかクローンかは明かされていないので観客にゆだねると言うことでしょうか。

6-②クローン人間を作る技術があるなら貧しい国というのはおかしいのでは

 ”仲間”の博士が言うにはどうやら自国に持ち帰って研究しても何故かクローン技術は成功しないようです。

6-③さいごに

 てっきり最後はお金払ってクローン作れば解決と思っていたらお金が足らずに処刑されるパターンというオチだと思っていましだが、そんな浅はかなあらすじではありませんでした。今回もミア・ゴスが”パール”シリーズに続き怪演でした!